2022/08/30

最大の恐怖は「苦」⑧-1

怯える理由のまとめ「ほんものの恐怖とは? ⑦-2の続き


‘Taṇhā janeti purisaṃ, cittamassavidhāvati;
Sattosaṃsāramāpādi, dukkhamassamahabbhaya’’nti.


渇愛が人(生命)を生む。
心が生命を走らせて(生かして)いる。
輪廻に嵌まっている生命には、「苦」(生きること)が最大の恐怖です。

これがお釈迦様の決定的な言葉です。難しいと思います。最大の恐怖は「苦」なんです。


お釈迦様は四聖諦を語りました。その一番目が苦聖諦。いわゆる生きることが苦であると。これは大胆な言葉です。

すべての人は「生きることは楽しいことだ」と考えています。研究しないで勝手に決めているんです。

でも、生きることを客観的に、科学的に観るならば、苦であることがわかるでしょう。


生きる場合は、生老病死と愛別離苦、求不得苦、怨憎会苦、五取蘊苦という四苦八苦が確実にあります。これが人生です。

年をとらなければ、生きていられません。細胞は年をとります。

病気は細胞に根本的にあるもので、細胞一個一個に病気がそなわっているのです。

ですから、命とは生老病死です。それらは好ましいものではありません。

24時間頑張らなくては生きられないのです。これに終わりはありません。

布団に入ったからといって休んでいるわけではなく、生き続けています。

夢を見たり、いびきをかいたり、寝返りを打ったり、いろいろなことをしています。寝ているときでも体調が悪くなったりして、苦しいのです。

どこまでやるのでしょうか? 終わりがありません。やってやってやり続けています。

自分に聞いてみてください。何回お風呂にはいればいいのでしょうか? 何回歯を磨けばいいのでしょうか? 歯はある限りと言っても、歯がなくなったら入れ歯にしますから、その手入れをしなくてはいけないでしょう。終わらないのです。

ですからお化けが怖いではなく、生きることが怖いのです。これが最大の恐怖です。


生きることが苦なら、生きることへの愛着を捨てなければなりません。

生きることは苦から苦への連続です。私が立ったり座ったりしているのは、苦がやらせているのです。

幽霊が怖い、あれが怖い、これが怖いではなく、私自身が怖いんです。

自分に愛着があるから幽霊が怖いんです。幽霊が「うれめしや~」と言ってきても、「その言葉は聞き飽きた。あんたに他の曲はないの?」と言えばよいのです。

本当のところは私自身が恐怖のかたまりであって、生きることが恐怖です。

ですから生きることにたいする愛着を捨てるべきなのです。

(続きます)


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【目 次】ほんものの恐怖とは?

スマナサーラ長老 法話「ほんものの恐怖とは?」
文:出村佳子

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生きとし生けるものが幸せでありますように

【根本仏教講義】ほんものの恐怖とは?スマナサーラ長老