②区別して調べる(択法覚支)
悟りを支える7つの要素(七覚支)の2番目はなんでしょうか?
択法覚支です。パーリ語で「dhammavicaya-sambojjhaṅga(ダンマヴィチャヤ・サンボッジャンガ)」といいます。
気づきを実践し、念覚支が育っていくと、次に「見ている現象をより明瞭に観る」ことができるようになります。これを「択法(dhammavicaya)」といいます。
択法とは、「さまざまな現象を区別して調査する/調べる」ことです。ものごとを区別して、その特性がよく見えるようになるのです。これは「差別」ではなく、「区別」という客観的な観察になります。
では、択法(ダンマヴィチャヤ)の「法(ダンマ)」とはなんでしょうか?
「法(ダンマ)」という言葉には意味がいくつかありますが、ここでは「現象の性質」という意味になります。
具体的にいえば、「善・不善」の性質、「非難されるもの・非難されないもの」の性質、「劣・優」の性質、「黒・白・混在」の性質です。
これらの性質を、区別して詳細に観察するのです。
悟りの1番目の要素「気づき(sati)」を十分に実践し、さまざまな現象を絶えまなく観察していると、次に「択法」がおのずと生じます。
択法が生じると、諸々の現象がよりはっきりと見えてくるのです。
心に生じる現象には、それぞれ固有の性質があります。
心はさまざまな現象を区別して、データどおりにその性質を見ることができるのです。
この経典で挙げられているのは、
・善いもの(kusala)
・不善のもの(akusala)
・非難を伴うもの(sāvajja)
・非難のないもの(anavajjā)
・劣っているもの(hīna)
・優れているもの(paṇītā)
・暗いもの(kaṇha)
・明るいもの(sukka)
・暗いものと明るいものが混在しているもの(sappaṭibhāgā)
です。
最後の3つを少し補足しておきましょう。
Kaṇhaとは、暗いものや黒いものという意味で、悪行為・罪のある行為(pāpa)を指しています。
Sukkaとは、明るいものや白いものという意味で、善い行為・徳のある行為(puñña)のことです。
Sappaṭibhāgāとは、暗いもの(黒)と明るいもの(白)の両方が混在しているもののことです。
こうした法(現象)を区別して観察するのです。
択法(dhammavicaya:ダンマヴィチャヤ)の択(vicaya:ヴィチャヤ)とは「調べる」という意味です。
悟りの第1の要素「気づき(sati)」を十分に実践していると、心に「調べ、区別する機能」が育っていきます。
それで「現象(法)がどのようなものか」と、より細かく見えるようになるのです。
チャンディマ・ガンゴダウィラ長老(著)
『こころの栄養―5つの蓋と7つの悟りの要素〈五蓋と七覚支〉
第4章 悟りの栄養素――七覚支』より