2019/05/18

業(kamma)は直線ではない―生き方を変えられるのは、いま:『マハーカンマヴィバンガ・スッタ(大業分別経)』


すでにやってしまった行為を過去に戻って取り消すことは、私たちにはできません。

いくら悔やんだり、悩んだりしても、やった出来事をなかったことにすることはできません。

それなら、どうすればよいのでしょうか? 苦しみの報いを受けるしかないのでしょうか?

ブッダはその解決策を教えてくださっています。

それは、「いま最善を尽くして、善い行為をすること」です。

過去はもう戻ってきません。

将来はどうなるのかわかりません。

でも、いまの瞬間なら、その条件の中で、ある程度はどのようにでもできるのです。


この経典では、「業(行為と結果の現れ方)は直線ではない」ということが説かれています。


もし「業」が直線で、すでに定められているなら、過去におこなった悪行為にたいして、私たちはもうどうすることもできません。苦しみの報いを受けるしかないでしょう。


でも幸い、「業」は直線ではありません。あらゆるものごとは無常であり、変化しています。


チャンディマ長老は、だからこそ、ブッダが説いた「業の複雑性」を理解して、常に正見を保ち、いまを最善に生きるよう、強くすすめてくださっています。


結局のところ、私たちが今後どうなるのか、どう死ぬのか、どこに生まれ変わるのかということは、いまをどう生きるのかにかかっているのでしょう。


本書は、過去のことに左右されず、いま心を清らかにし、正見を持って、「道」を前向きに歩んでいくことについて説いた、チャンディマ・ガンゴダウィラ長老による経典解説講義の日本語訳です。