ちょっとしたことで怖がる人「ほんものの恐怖とは?⑥-9」の続き
lābhasakkārasilokaṃ nikāmayamānā
他人から利得・称賛・尊敬されることを期待する
出家修行者たちは世間の尊敬を受けます。俗世間の立場から見れば、さまざまな欲から離れて生活するのはすごいことだと思い、頭を下げます。俗世間では、他人に褒め称えてもらうのはとても難しいことです。皆に褒められている人の数は少ないのです。
そこで、人類の役に立つことを何一つせず、ただ世間から褒めてもらいたい、という病気だけがあり、仕事をして苦労する気持ちはないが、贅沢に暮らせる収入を社会から得たい、という妄想のある人がいるとしましょう。
その人は、「出家すれば自分の目的に簡単に達することができる」と思ってしまうのです。
しかし、出家してみたら、期待通りに褒め称えられることも、お布施をもらうこともないことに気づきます。
出家社会では、業の働きは明確に見えます。
ある出家は十分お布施をもらうし、ある出家はやっと生きられる程度です。
在家の尊敬と信頼を受ける場合も同じです。ある出家は世間によく認められて、たくさんの人を指導します。
ある出家者には誰も指導を受けようとしません。
称賛や利得、尊敬を期待するという病を持つ出家は、期待はずれに落ち込みます。
それから、恐怖感に襲われるのです。
(続きます)
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【目 次】ほんものの恐怖とは?
スマナサーラ長老 法話「ほんものの恐怖とは?」
文:出村佳子
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生きとし生けるものが幸せでありますように