2022/09/12

だったら愛着を捨てましょう ⑧-2

最大の恐怖は「苦」「ほんものの恐怖とは? ⑧-1の続き


私たちは生きることに愛着を持っています。生きていきたいと思っています。

理由は?

生きることは楽しいから、と言います。でも本当は……

怖いからなのです。

なぜ仕事に行くのでしょうか?

仕事に行かなかったら怖いからでしょう。

なぜ収入が欲しいのですか?

お金がなかったらやばいからでしょう。

スーパーで買い物をするとき、なぜ商品の賞味期限を見るのでしょうか?

怖いからでしょう。原材料が表示してあるところに「この商品の製造工場では小麦・乳・卵・ビーナッツ・そばを含む製品を製造しています」などと警告しているものもあります。アレルギーのある人にとっては、それを食べることは命に関わる場合もあります。

では、どこまで気をつければいいのでしょうか?

パンもケーキも食べられませんし、調べて調べて調べまくらなければいけないのです。

なぜ服を着るのかというと怖いからです。

なぜ靴をはくのかというと怖いからです。

なぜ家を建てるのかというと怖いからです。

生きるためには仕事をしなければなりませんし、勉強をしなければなりません。結婚もしなければなりません。やらなかったら?

怖いのです。

そこに解決策はありません。

勉強したからといって、結婚したからといって、恐怖感は消えません。
何も保証はないのです。

大企業に就職したからといって、これで安心だとは言えません。

みんな頑張っています。なぜかというと怖いからです。

なぜ奥さんの機嫌をとろうとしているのかというと怖いからです。

なぜ子どもの機嫌をとって楽しませようとしているのかというと、そうしなかったらどんな結果になるかわからないからです。子どもを無視したらすごく怖いのです。

出かけるときは、電気を消して、窓を閉めて、鍵をかけます。

怖いからです。

横断歩道を渡るときは右を見て、左を見て渡ります。

なぜそんなことをするのかというと、怖いからなんです。

日本では電車に乗るときはちゃんと並んでいます。
銀行や郵便局に行っても番号札をとってちゃんと待っています。
なぜそんなに行儀よく待っているのかというと、怖いからなんです。

全部恐怖感です。生きることそのものが恐怖感なのです。

だったら、愛着を捨てましょう。何にも愛着のない心が、自由自在なんです。

何か変化しても、なんのこともありません。

愛する人が亡くなっても、「誰でも死にますから」と落ち着いていられるのです。

「死んでほしくない」と思ったら恐怖感が生まれます。

「死は自然の流れだ」と思ったら、安穏でいられるのです。

そういうことで、最大の恐怖感は生きることです。

生きることは苦です。

これがお釈迦様の最終的な結論です。

(了)

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【目 次】ほんものの恐怖とは?

スマナサーラ長老 法話「ほんものの恐怖とは?」
文:出村佳子

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生きとし生けるものが幸せでありますように

【根本仏教講義】ほんものの恐怖とは?スマナサーラ長老