ブッダが教えた「自分と他者のまもり方」
みなさんは日々、自分を大事にまもっていることと思います。
ケガをすれば手当てをし、病気になればクスリを飲み、お腹が空けば何かを食べ、疲れたら休むなど、自分を大事にまもっているでしょう。ケガをしたまま、のどが渇いたまま、お腹がすいたまま、何日もほったらかしにしている方はいらっしゃらないと思います。
また、家族や財産も大事にまもっているでしょう。家の玄関にカギをかけたり防犯カメラをつけたりなど対策をしっかりとっているのではないでしょうか。
このように、人はさまざまなかたちで自分自身や家族、財産などをまもっています。
でも、それで十分でしょうか? 何か忘れているものがありませんか?
「心」はまもっているでしょうか? 「思考」はどうでしょうか?
ある日、ブッダは「自己を真にまもるとはどのようなことか」、また「自己をまもっているかどうかを見分ける方法」について説かれました。
ご紹介する経典は、「Attarakkhita Sutta(アッタラッキタ・スッタ)」です。
Atta(アッタ)とは「私」や「自己」という意味、rakkhita(ラッキタ)とは「まもられている」という意味で、合わせて「自己がまもられている」という意味になります。
「自己をまもる」とは一般的に、内と外から生じうる危険、危害をもたらす関係や状況など、さまざまなトラブルから自己をまもるということです。
まもることができたら、次に安全を保つ必要があります。
安全とは何でしょうか?
ひとつは身体の安全です。なかでも健康ですね。私たちはみな身体を持っています。身体を持っているかぎり病気になることは免れませんが、それでもできるかぎり健康を保つようケアをし、メインテナンスをすることが必要なのです。
ブッダは『ダンマパダ(Dhammapada)』において、
「健康は最上の利得である」
(Ārogyaparamā lābhā)
と説かれました。
利得には、お金や財産、繁栄、成功、地位などいろいろなものがありますが、どんな利得よりも健康が最高の利得である、とブッダはおっしゃっています。
健康であるからこそ、私たちは元気に活動したり、働いたり、善い行為をしたりすることができるのです。
それから、「身体」や「財産」をまもることより大切なのは、「心」をまもることです。「心」をまもることは、ほかの何をまもることよりも遥かに大切なことなのです。
『セルフケア:ブッダが教えた〈心〉と〈言葉〉と〈身体〉のととのえ方』
「はじめに:ブッダが教えた 自分と他者のまもり方」より