はじめに
お化けが怖い。先祖の霊が怖い。祟りが怖い。悪魔が怖い。隣の怪しいおじさんが怖い。通り魔が怖い。女が怖い。男が怖い。他民族が怖い。津波が怖い。噴火が怖い。自然災害が怖い。犯罪に巻き込まれるのが怖い。戦争が怖い。カルトの勧誘が怖い。宇宙人の侵略が怖い。世の中にはかくも多くの恐怖の対象があります。怪談やホラーとして娯楽にできるものはわずかで、多くの「怖いものリスト」は、私たちのリアルな悩み心配の種です。
あるとき、お釈迦様は「この世界で最大の恐怖とはなんですか?」という質問を受けました。最大の恐怖を知り、またそれを克服することができれば、私たちは何も恐れずに安心して楽しく生活できるはずです。気になるブッダの答えを学んでみましょう。(講演会サマリーより要約)
私たちはとにかく自分の妄想で恐怖をかき立てています。
隣のおじさんが怖いなら、見ないふりをすればいいでしょう。
通り魔が怖いなら、危険な所に行かなければいい。
他民族が怖いというのは、人間の差別です。自分が生命を差別して勝手に怖がっているのです。
津波や火山の噴火、自然災害が怖いという場合、これは自然のことだから人間にはどうすることもできません。
カルト勧誘が怖いのは、自分がだらしないだけでしょう。勧誘されたら断るか議論すればよいのです。
宇宙人の侵略が怖いという人は映画の見すぎです。
このイントロダクションを見ても、私たちが怖いと言っているのは、結局いい加減で、くだらないことばかりです。
祟りなんてあるわけないでしょ。自分の亡くなったおじいさんが自分の首を絞めようと霊界で待っているなんて、ありえない話です。
結論として言えるのは、妄想すれば怖いものリストを無限大に作ることができるのです。
潔癖症
潔癖症という精神的な病気について考えてみましょう。
この世界はそこら中、細菌だらけです。世界だけでなく、自分の口の中にも、腸の中にも、細菌がいっぱいです。その中で潔癖症でいることなど、とうてい無理な話です。
それでもやるなら、徹底的にやってみてください。生きていけなくなります。
ですから、どこまで妄想するのでしょうか。世の中にはたくさんの細菌がいます。それだけで話は終わりです。自分の妄想で潔癖症の病気になっているのです。
男が怖いとか女が怖い、人が怖いというのは、自分勝手にイメージを作って頭で妄想し、怖いと言っているだけです。
誰かがあなたに目の前で「このやろう」と言ったなら怖いと思ってもいいのですが、ほとんどの場合、ただ感情で怖がっているのです。
そういうことで、恐怖感というのは精神的な病気なのです。
どのくらい怖いものがあるのかで、皆様の精神病の重さを測ることができます。
なんでもかんでも怖いなら、かなり病気です。
たとえば「私のアパートで人が自殺した。誰も部屋を借りてくれない。ずっと空き部屋になっている」と言う大家さんがいるとしましょう。
私なら、「半額にしてください。住みますから」と言います。
そこで大家さんが「夜、その自殺した人が出てきて首を絞められますよ」と言ったら、「家賃が半額の方がいいじゃないですか」と言います。それに、本当に死んだ人が出てきたら楽しいと思います。外出するときも「ちゃんと留守番してください」と言って出かければよいのです。
心が明るい人には、ものごとをそういうふうに楽しく明るく考えることができるのです。
ということで、最初のポイントを憶えておいてください。
「怖い」というのは、自分の妄想の結果です。妄想が原因なのです。
(続きます)
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スマナサーラ長老 法話「ほんものの恐怖とは?」
文:出村佳子
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生きとし生けるものが幸せでありますように