学問のないチューラ・パンタカ/便所掃除の不可触賤民〈ブッダに出会った人たち〉「来たれ見よ3-②」からの続き
●大商人アナータピンディカ
大商人の中で有名な人は、在家仏教徒の第一人者、アナータピンディカ (Anathapindika) です。
アナータピンディカは非常に心のやさしい人で、惜しみなく貧しい人たちを助けていました。
ある日のこと、商用で知人の長者の家を訪ねたところ、とても忙しそうにご馳走を準備していました。
アナータピンディカが「何かあるのですか?」と尋ねると、
長者は「明日、お釈迦さまとお弟子さんたちにお布施するのです」と言いました。
それを聞いたアナータピンディカは「お釈迦さまがいらっしゃる!」と、大変喜びました。
その夜、アナータピンディカは明日まで待つことができず、真っ暗闇の中、お釈迦さまを迎えに出かけたのです。
外はあまりにも真っ暗なものですから、途中、何度も怖くなり、不安になって引き返そうと思いましたが、それでもお釈迦さまを迎えに行こうと前に進みました。
やがて、お釈迦さまが暗闇の中で座っていらっしゃる姿が見えました。
アナータピンディカがお釈迦さまに近づいていくと、
「スダッタ、よくここへ来ました」
と、お釈迦さまが言われたのです。
アナータピンディカは、お釈迦さまが「スダッタ」という自分の本当の名前を呼んでくれたことに感激し、お釈迦さまの足元に礼拝しました。
お釈迦さまはアナータピンディカに、布施、戒律、欲の危険性、解脱の徳などを説き、さらに四聖諦を説かれました。
(この説法の方法は、順を追って次第に法を説くという意味から、次第説法とも言われています)
アナータピンディカはこれらすべてを理解し、悟りを開いて聖者の最初の位である預流果に達したのです。
アナータピンディカは、お釈迦さまやお弟子さんたちが修行しやすい静かな場所をお布施したいと考えて精舎を建立しました。
これが有名な「祇園精舎」です。
(続きます)
生きとし生けるものが幸せでありますように
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法話:スマナサーラ長老
来たれ見よ (Ehipassiko) :誰でもチャレンジできる仏教実践
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文:出村佳子
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