人は、複雑な問題をたくさん抱えています。
ある神がお釈迦様のところに行き、どうすれば問題を乗り越えられるのかということについて次のように尋ねました。
「世尊よ、内の混乱と外の混乱についてお説きください。人は混乱に絡まれています。混乱のもつれを解くのは誰でしょうか、お聞かせください」
心の混乱
「混乱」とは、人が日常生活の中で直面する心身に生じるあらゆる動揺や乱れのことです。
私たちは多くの問題に絡まれています。
生まれた瞬間から、臨終時の最後のひと息まで、さまざまな問題にぶつかります。
問題にぶつからずに生きることは、誰にもできません。
お釈迦様はこのように教えられました。
「この世の中で穏やかに生きていきたいなら、問題の本質を理解してください。
生きることの目的を深く観察し、なぜ人生に満足していないのかを見いだすようにしてください」と。
このことが理解できるなら、不必要な恐怖で苦しんだり、敵意や恨み、悩みを抱いたりする理由はなくなるでしょう。
誰もがみな、幸せで、穏やかで、充実した生活をおくることを望んでいます。
でも、どのくらいの方がその幸せを得ているのでしょうか?
私たちは満足を得るために、あらゆる方法を使って何でもしようとします。
でも、心から満足することは決してありません。
なぜ、満足できないのでしょうか?
それは、世の中の本質を理解していないからです。
世の中の本質を理解することによってのみ、問題を最小限にとどめたり、乗り越えたりすることができるのです。
私たちが「欲しい」と思っているものは、単なる幻想にすぎません。
また、欲しいものを得たとしても、次に「別のものが欲しい」と、いま得たものよりさらに大きな欲望をつくるだけなのです。
問題に向き合う
私たちはたいてい今ある問題を解決しようとするあいだに、別の新しい問題もつくりだしているものです。
その新しい問題が、現在の痛みを軽減させるために必要なものなら、その新しい痛みを我慢して受け入れます。
たとえば、胃潰瘍で激しい痛みにさいなまれているとき、医者に診てもらいます。
もし医者に、「手術が必要です」と言われたなら、手術というさらなる苦しみを受けなければなりません。
でも、手術以外に治療法がないとわかっているのですから、治すために手術をするという新たな問題を受けいれることを決意します。
手術をしているあいだは、あの激痛がこれでやっとなくなるだろうと期待して、痛みや不安に耐えるのです。
同様に、私たちは今ある大きな問題を乗り越えるために、別の痛みや問題を受けるということをしています。
ときには喜びをもって新たな苦しみに向き合います。
新たな問題に向き合うことや何かを犠牲にすることをせずに、今ある問題を乗り越えることはできないのです。
問題を乗り越えるのに、明らかなことがひとつあります。
それは、わがままで、頑固で、暴力的な態度では、問題を根本的に解決することができないということです。
お釈迦様は、この問題を解決するために、実践的で現実的な方法を説かれました。
問題をただ一時的に取り繕って、短期的な幸せを得る方法はすすめていません。
そうではなく、問題の根本にまで入り込み、その主要な原因を発見することを教えられたのです。
医者の中には、病気そのものを治すのではなく、症状だけを治す方もいます。
お釈迦様が教えられた方法は、問題そのものを治す方法です。症状を、ただ一時的に軽減させるだけではないのです。
(続きます)
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出村佳子〔訳〕
"Who creates problems?" by Ven. Dr. K. Sri Dhammananda Thero
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