どうすれば問題を乗り越えられるのか?「問題をつくるのは誰か?①」からの続き
感覚は変化する
お腹や頭が激しく痛むとき、医者は鎮痛剤を処方します。
それを飲むと、しばらくのあいだは痛みを感じなくなるでしょう。
でも、それは完全に治った、ということではありません。
鎮痛剤の効き目が切れたとき、痛みはまた戻ってくるのです。
たとえば、身体に大きな傷を負ったとしましょう。
いろいろな薬を塗って、痛みがどうにかおさまったとします。
医者に「今、どうですか?」と聞かれると、「よくなりました」と言うでしょう。
でも、この「よくなった」とはどのような意味でしょうか?
どんな感覚でしょうか?
何か証明できるものはあるのでしょうか?
ここで「よくなった」というのは、「痛みがない」という意味です。
とりあえず痛みがないとき、周りの人に「よくなった」とか「気分がいい」などと言うのです。
それから「よくなった」と言うとき、これは「一時的だ」ということを忘れてはなりません。
痛みがまた生じたり、あるいは他の感覚に置き換わったいします。
これが「生」の本質なのです。
お釈迦様は「永続する幸せ」を得る方法を教えられました。
それは、問題や苦しみの主要な原因を根元から取り除くことです。
一時的に抑えることではありません。
ときどき、お釈迦様の教えを実践するのはむずかしいと言う人もいます。
それは、苦しみをすぐに取り除くことができないからです。
お釈迦様は、こう教えられました。
「苦しみの原因は心の非常に深いところにまで根付いているため、
強力な手段を使って苦しみの原因をしっかりと根絶することが必要である。
根絶したなら、苦しみは二度と生じない」
混乱のもつれをほどく人
混乱のもつれをほどくにはどうすればよいのでしょうか、という神の問いにたいして、お釈迦様はこのように答えられました。
「戒律(sīla)をよく確立した賢者は、心と智慧(paññā)を育てる。
そのように精進し、智慧のある人が、混乱のもつれをほどくのである」
精進と智慧のある人は、存在の本質を理解して、戒律(sīla)を育てます。
戒律(sīla)とは、道徳にもとづいて感覚や言葉、行動を制御することです。
精進と智慧のある人は、問題にどのように向き合い、問題をどのように乗り越えるのか、ということを知っているのです。
お釈迦様は、「問題を解決したいなら、善良になり、精進し、理性をもって行動するように」と教えられました。
問題を根本的に解決できる方法は、ほかにないのです。
迷 信
問題を抱えているとき、私たちはたいてい誰かのところへ行って、あれこれ相談したりするものです。
相談相手の中には、このようなことを言う人もいるでしょう。
「神社やお寺、礼拝所へ行き、神仏にお祈りしたり、呪文やマントラを唱えなさい」と。
お釈迦様は、これとは正反対ことをすすめました。
「問題が起こったとき、みずから直接問題にアプローチし、問題を分析して、原因がどこにあるのかを発見してください」と。
ここで厄介なのは、私たちが問題にぶつかったときにはいつでも、恐怖に襲われるか、無知になるか、妄想するか、迷いに陥ってしまうということです。
それで、自分では問題を解決することができず、他人のところへ行くのです。
たとえば、ビジネスで失敗したとしましょう。そうすると、幸運が得られるよう、成功できるよう、何か霊的(神秘的)な力に頼ろうとします。
でも、そうしたものはほとんどが迷信です。
いわゆる占い師や預言者と呼ばれる人のなかには、弱い人の無知を悪用して、「あなたに邪悪な霊が憑いてますよ。だから運が悪いんです」などと言って騙す人がいます。
お釈迦様はこのように教えられています。
「もし成功したいなら、迷信に頼らず、忍耐と理解を育ててください。
無意味なことに時間やお金を浪費することなく、理性的に生きてください」
(続きます)
・・・・・・・・・・・・・・・
出村佳子〔訳〕
"Who creates problems?" by Ven. Dr. K. Sri Dhammananda Thero
・・・・・・・・・・・・・・・