ほんものの恐怖とは?②-1 の続き
想定外
飛行機に乗るときは、無事に着陸できるということを想定しています。途中で墜落するかもしれないということは考えません。みんな気持ちよく飛行機に乗りますが、乗るということは、飛行機は墜落しないという想定があるからです。
でも、その想定ってどういうことでしょうか?
自然の法則に関係ないことです。高度が上がっている途中で、鳥が飛んできて飛行機のエンジンに挟まったらどうしますか?
このように、ほんのちょっとのことで状況が変わってしまうのです。そういうものが法則です。
私たちは法則と関係なく、想定するのです。個人の主観的な想定は、普遍的な法則に関係がありません。
普遍的な法則を仏教用語で、ダンマニヤーマと言います。ダンマというのは世の中の法則です。法則は変わりません。法則だけは、一定しているのです。
たとえば地球の自転は、ある程度一定しています。しかし、必ずしもその通りということは言いづらいのです。過去をずっと調べてみても、一定に自転しているということは言えます。では、これからも、百万年後も、一億年後も、地球は同じように自転しているということは言えるでしょうか?
条件が変わるとどうなるかわかりません。
しかし、法則はそのままあります。法則は変わりません。
ですから人は勝手にいろいろなことを想定しますが、それは意味がないことなのです。
目の前で現象が変化して流れるとき、主観的な想定が壊れます。私たちは毎日これを経験しています。想定していなかったとか、想定外でしたとか、想定していなかったことが毎日起こるのです。それで不安になり、イライラします。
出張で新幹線に乗っているとき、強風が吹いて線路に何かが落ちたとしましょう。新幹線が動けなくなり、線路上で止まります。隣の駅まで歩いていける距離ではありません。それまでは「この時間に目的地に到着するだろう」と想定して安心していました。想定外のことが起きたことで、心はイライラし、恐怖感が出てくるのです。
私たちの心はこの状態を処理しない、処理できないため、恐怖に襲われます。想定していたことと違うことが起きると、どうすればいいのか、心はわからないのです。