2022/12/28

四聖諦:四つの聖なる真理 ④「アチャン・チャー法話」

 

四聖諦――四つの聖なる真理  からの続き


今日私は、苦と、苦の原因と、苦の滅と、苦を滅する道をどう理解するか、ということについて話しています。苦を知ったなら、苦から離れるべきです。苦の原因を知り、苦を滅するべきなのです。実践して、苦を滅してください。無常・苦・無我が理解できたとき、苦は滅するでしょう。このようにして、涅槃に近づいていくのです。


別の言い方をすれば、前に進むことも苦であり、後ろに下がることも苦であり、止まることも苦です。そこで前に進むことをやめ、後ろに下がることをやめ、止まることをやめます。そこに何かあるでしょうか?


何もありません。このとき、身体と心の苦が終わるのです。これが苦の滅です。理解するのはむずかしいですね。でも、このことをいつも真剣に観察するなら、現象を超えて正見に達するでしょう。そして「滅」に達するのです。これがブッダの究極の教えであり、終着点です。ブッダの教えはすべて、完全に捨てたところで完了するのです。



今日のこの法話が正しいとか間違っているなどとすぐに判断せず、まず法話を聴いてください。たとえば私が皆さんに、「これ、すごくおいしいですよ」と言って果物をあげるとしましょう。皆さんは私の言ったことをちゃんと聞くべきですが、まだ味わっていないのだから、すぐに信じてはなりません。


その果物が甘いか酸っぱいかを知りたければ、切って自分で味わわなければなりません。それで初めて味がわかるのです。


私の法話も同じです。この法話を聴いただけで終わらせないでください。実際に自分で試して実践するのです。そうすれば、その味を実際に味わえるでしょう。


ご存じでしょうが、ブッダには師匠がいませんでした。かつて、ある行者がブッダに「あなたの師匠は誰ですか?」と尋ねたとき、ブッダは「私に師匠はいません」と答えました。


その行者は頭を横にふりながら去っていきました。


ブッダは非常に正直な方でした。真理を知らない人や受け入れようとしない人にも真理を説いていたのです。


私が皆さんに、私の話を鵜呑みにしないようにと言ったのは、ブッダが「自分で理解していないのに、人の話を鵜呑みにすることは愚かである」とおっしゃったからです。これが、ブッダが「私に師匠はいません」とおっしゃった理由なのです。これは事実です。


しかし、このことを正しく理解しなければなりません。そうでなければ、皆さんは師匠にたいして敬意を払わなくなるでしょう。


皆さんは、「私に師匠はいない」と言わないようにしてください。善とは何か、悪とは何かを教えてくれる師匠の話をよく聴き、信頼し、その教えに基づいてみずから実践することが大切なのです。


ブッダの在世中、ブッダを嫌う弟子たちがいました。というのもブッダは弟子たちに、怠ることなく精進するよう教えていましたから、怠け者の弟子たちはブッダを恐れ、ひどくいやがっていたのです。


ブッダが亡くなったとき、あるグループの弟子たちは「私たちを導いてくれるブッダがもういない」と嘆き悲しみました。


一方、別のグループの弟子たちは「すべきことを説くブッダがもういない」と喜んだのです。


また別のグループの弟子たちは、「生まれたものは消えていく。これは自然の法則である」と考察し、落ち着いていました。皆さんはどのグループの人でしょうか?


現代もブッダの時代とそれほど変わりません。どの師匠にも弟子がいますが、弟子のなかには自分の師匠を嫌う者がいるのです。表にはださないかもしれませんが、心のなかでそう思っています。そのような感情を抱くのは、煩悩のある人にとっては普通のことでしょう。ブッダにたいしてでさえ、嫌う人がいたのですから。


私にも、私を嫌っている弟子たちがいます。私は彼らに悪い行為をやめるように言いますが、彼らは悪い行為が好きですから、私のことを嫌うのです。そのような人は、けっこうたくさんいます。


理性のある人なら、決意してダンマを実践するでしょう。

(「四聖諦」法話 終わり)

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アチャン・チャー法話集

The Four Noble Truths

翻訳:出村佳子

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生きとし生けるものが幸せでありますように