聞き上手になるためにⅡ 拒絶感情を持たずに聞く「ブッダの聞き上手入門 ④-3 からの続き
これまで「聞き上手」になる方法についてお話しました。
- 真面目に聞くこと
- 自分の偏見は攻撃されると覚悟すること
- 拒絶感情を持たずに聞くこと
- 論理的・理性的かを調べること
- できるだけ相手の思考で理解すること
- 普遍的かを調べること
- 自分に役に立つかを調べること
- 十分に納得した上で実行すること
- 相手が信頼できる人かを調べること
このようにして智慧が現れるのです。
法話を上手に聴く順番
最後に経典から引用します。
聞き上手になる順番について説かれています。
Idha, bhikkhave, saddhājāto upasaṅkamati ① , upasaṅkamanto payirupāsati ② , payirupāsanto sotaṃ odahati ③ , ohitasoto dhammaṃ suṇāti ④ , sutvā dhammaṃ dhāreti ⑤ , dhatānaṃ dhammānaṃ atthaṃ upaparikkhati ⑥ , atthaṃupaparikkhato dhammā nijjhānaṃ khamanti ⑦ , dhammanijjhānakkhantiyā sati chando jāyati ⑧ , chandajāto ussahati ⑨ , ussāhetvā tuleti ⑩ , tulayitvā padahati ⑪ , pahitatto samāno kāyena ceva paramasaccaṃ sacchikaroti ⑫ , paññāya ca naṃ ativijjha passati ⑬ .
(中部経典70 Kītāgiri sutta)
① saddhājāto upasaṅkamati,
信頼できるかを調べる
お釈迦様はおっしゃいました。
「私を調べて調べて、表からでも裏からでも隠れてでも調べてください。信頼できる人かどうかを、まず調べてください」と。
あるバラモンが三か月間、お釈迦様のことを調べました。一緒に住んでみたんです。
それで信頼できると分かったところで、お釈迦様と対話することに決めたのです。
② upasaṅkamanto payirupāsati,
付き合ってみる
お茶はいかがでしょうかとか、そういうふうに普通に付き合ってみます。
これは、個人的にその人の性格などを知るために必要です。
授業だけの付き合いならば、教えている人としての姿しか理解できません。仲間同士ではどのような性格か、家族にたいしてはどのような性格かはわからないのです。
人を信頼するためには、全体的な性格を知ることも、ある程度で必要です。
さきほど触れたバラモンが「お釈迦様は信頼できる人だ」と決めたのは、説法する以外のお釈迦様の個人的な生き方も、細かく調べたからです。
③ payirupāsanto sotaṃ odahati,
付き合うと耳を傾けたくなる
仲良く付き合ってみると、なんとなく聞く耳が生まれてきます。
仲良くすると、互いの意見交換も当然、生まれます。一方的に相手の話を聞くよりは、そのほうが相手の話を理解しやすいのです。
お釈迦様の場合は、時候の挨拶を終えてすぐ、互いの意見交換を始めるのです。
④ ohitasoto dhammaṃ suṇāti,
法を聞く
相手が信頼できる理性のある知識人だとわかったら、相手の話を聞かなくてはいけないのです。要するに、相手が授業を始めるのです。
これは恐らく一方的な話になる可能性もあります。しかし、自分がしっかりと集中して話を聞くのです。
この経典は、お釈迦様の説法を聞く順序を教えているので、「集中して法を聞きなさい」と書かれています。
⑤ sutvā dhammaṃdhāreti,
聞いた法を憶えておく
お釈迦様がおっしゃったことを、よく聞いて憶えます。
昔は録音したりノートをとったり、という習慣はなかったため、師匠の話を聞いて、その内容を明確に憶えなくてはいけないのです。
経典を読む方は、経典ではあまりにも繰り返し文句が多く煩わしいと思われるかも知れません。
しかし、本で読むのではなく、人から話を聞くとイメージしてみてください。
あの繰り返し文句のおかげで、内容を簡単に記憶することができるのです。
現代は、メモをとるという習慣があります。その時は、集中力が切れるのです。
録音する人にも悪い癖が見えます。「後で聞けますから」という気持ちで、話にそれほど集中しないことです。
しかし、生の声で憶えようとするならば、自分の心に内容がしっかり刻み込まれるのです。
⑥ dhatānaṃ dhammānaṃ atthaṃ upaparikkhati,
憶えた法の意味を調べて、観察してみる
憶えた教えの内容の意味は何なのかと、自分自身で考えなくてはいけないのです。
これは話を聞く人の宿題です。
意味を観察して理解すれば、その知識や能力は他人のものではなく自分のものになるのです。
生きとし生けるものが幸せでありますように
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スマナサーラ長老 法話「ブッダの「聞き上手」入門」
文:出村佳子
根本仏教講義「目 次」
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