2023/12/13

すべての感覚を戒めるべきか?「自由への突破口②-4」

  

 3つの感覚「自由への突破口②-3」からの続き


感覚(楽・苦・不苦不楽)にたいする例外もある


在家のヴィサーカ居士が次にこう質問しました。

「すべての感覚を戒めるべきですか?」


ダンマディンナー長老尼は答えます。

「いえ、例外があります。苦の感覚、楽の感覚、不苦不楽の感覚の場合、欲、怒り、無知をなくすべきです。しかし、サマーディから生まれる楽の感覚は例外です」


瞑想して集中力が生まれてくると、サマーディが生じます。世の中では味わえない桁違いの楽しみが生まれてくるのです。これはものすごいエネルギーです。

長老尼は、「その感覚は放っておいてください」と説かれます。なぜならサマーディが生まれたのは、煩悩をいくらか抑えたからです。


サマーディ瞑想から生まれる楽の感覚を戒める必要はありません。その感覚から煩悩が生まれることは稀です。

釈尊の教えに従って瞑想する人であるならば、サマーディから生じる楽の感覚から煩悩は生まれません。

それは例外である、とダンマディンナー長老尼が説くのです。       


自由への突破口 スマナサーラ長老法話



「心を清らかにしよう、向上しよう、解脱に達しよう」と思うとき、苦を感じる


仏道を歩んでいる人は瞑想したり修行したりします。

上を目指そうと思えば思うほど、「これではダメだ。このままではいけない。心を成長させなくては。集中力をもっとあげなければ。解脱に達しなければ。悟らなければ」と思うでしょ。

そうすると苦しいんです。苦を感じるのです。

しかし、その苦の感覚も例外です。

なぜなら、その思考から煩悩は生じないからです。この人は煩悩をなくそうと頑張っています。

ですから、この苦しみも戒める必要のない苦しみなので、例外です。


禅定から生まれる「不苦不楽」


禅定にはランクがあります。

第1のランクに達すると、ものすごい楽しみが生まれます。楽しくてたまらなくなります。

第2のランクに達すると、楽しみが減って喜悦感が生まれます。

第3のランクに達すると、喜悦感が減って楽の感覚が生まれます。

第4のランクに達すると、苦も楽もない不苦不楽の状態が生まれます。その不苦不楽の感覚も例外です。

煩悩がかなり抑えられ、煩悩から離れていますから、この感覚を戒める必要はありません。例外です。


このヴィサーカ居士とダンマディンナー長老尼の対話は、中部経典のCūḷayamakavaggo のCūḷavedallasuttaṃ に入っています。


(続きます)


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法話:スマナサーラ長老

自由への突破口 〜遠離から喜びが生じる ➤ 目 次

根本仏教講義 ➤ 目 次

文:出村佳子

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生きとし生けるものが幸せでありますように