女性の社会的地位「仏教から見る女性②」から続きます。
男性と女性は異なる存在
ブッダは女性の地位を向上させました。
一方で、男性と女性の間には社会的にも生理的にも違いがあることを理解され、それぞれが日常生活のなかで実践すべきことを教えられました。
これは『増支部経典』と『相応部経典』に明確に述べられています。
男性の義務は、たゆまず知識の探究をすること、技術や技能を上達させ身につけること、仕事に専念し、家族を養い支えるために必要な収入を得る能力を持つことです。
女性の義務は、家庭を管理して夫の面倒をみることです。
『増支部経典』には、ブッダが結婚前の若い娘たちに与えた貴重なアドバイスも記されています。
新しい姻戚と共に生活するときには苦労が伴うことをよく理解すること。
義理の父母を心から尊敬し、自分の両親と同じように愛情をもって尽くすこと。
夫の親類と友人たちを尊敬し尊重すること。
このようにして新しい家庭に溶け込んで幸せな雰囲気を作るように
と教えられました。
さらに夫の性格を観察して理解し、行動や特徴、気質も知っておくこと。
新しい家庭のなかでいつでも役に立つように協力すること。
召使いに対しては礼儀正しく、親切に、そして用心深く接すること。
夫の収入を守り、家庭の出費はすべて適切に調整して管理すること、と教えられました。
これらは2500年以上も前にブッダが与えた助言ですが、歳月を経た今日でも変わらず有効な教えです。
それから、女性が生きるうえで経験しなければならない苦難や不利な点も明確に示されています。
女性は他の家に嫁ぐとき、自分の家族から離れるという精神的、肉体的苦痛を受けます。
また、新しい環境に順応しようとする際には、さまざまな困難や問題に遭遇しなければなりません。
このような試練や苦難に耐えなければならないのです。さらに月経や妊娠、出産の期間中には苦痛を受けます。これらは女性の特徴的な苦難や状況を示す自然現象です。
「経・律・論」の三蔵(Tripitaka)の中には、女性の誘惑的な振る舞いについての辛らつな言葉がいくつか述べられていますが、相応部経典には女性の長所も示されています。
ある条件のもとでは、女性は男性よりも洞察力があり、賢い。また聖なる八正道を実践すれば涅槃に至るか、あるいは聖者に達する能力があると強調されています。
ブッダの友人であるコーサラ国王に娘が誕生したときのことです。コーサラ国王は息子が誕生することを望んでいたため、娘の誕生に不満を持ちました。しかしブッダは他の宗教家たちと違い、女性へのあたたかい賛辞を呈して、次のように女性の良い特性を述べられたのです。
「女性のなかには男性よりも実に善良な人がいます。国王よ、その娘を育てなさい。智慧があり、徳が高く、義理の母をよく敬い、清らかで、優れた女性には、国王となり国を統治するような立派な息子が生まれることがある」
このように、ブッダは女性の性質を示す際、弱さだけではなく能力や才能も指摘されたのでした。
ブッダが述べられたことに納得がいかないところもあるかもしれません。でもよく観察してみれば、当時、ブッダが女性に語ったことは時を経た今日でもそのまま当てはまると言えるでしょう。というのも、大部分の国々で、女性たちが教育を受けたり、独立して職を得たりする機会は開かれているのですが、苦痛を負うことや感情に支配されやすいこと、差別待遇に脅え、我慢しなければならないことなどは、今でも変わらず女性たちが持ち続けている性質であり、状況であるからです。
(続きます)
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出村佳子(訳)
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生きとし生けるものが幸せでありますように