「改良」の問題点
人はよく「自分を向上させたい」「改良したい」と言っています。では、どのように「向上しよう、改良しよう」と考えているのでしょうか?
一般的に私たちはなんでも「合理的に」「より便利に」「より快適に」することが改良だと思っています。
より便利に、よりスピーディーに、より快適に生活したいと考えて、さまざまな機械や電化製品を開発しているのです。
このようなことを「改良」と呼んでいるのです。
しかし、ここには大きな問題があります。それは、自分を改良しないことです。
モノや機械はどんどん合理的になっていくものの、人間は非合理的なままですから、非合理的な人間が合理的な機械を使いこなせない、という問題が出てくるのです。
たとえば医療の世界をみると、技術が進歩すればするほど医療ミスが多くなるという傾向があります。
進歩が激しいため、医者たちは機器の使い方がわからず、十分に使いこなせないのです。
たとえば1千万円かけて最新機器を導入しても、その機器をうまく使えないまま、数か月経つと、また新しい機器が発売されます。
医療機関は、医者の腕だけでは現代のさまざまな病気に対処することができないということを知っていますから、最新の機器を買いたがりますが、なにしろ最新ですから、導入するたびに使い方を覚えなくてはなりません。
このような状態では、医療関係者は新しい機器に慣れることに精一杯で、患者のことを考える余裕がなくなってしまいます。
このように、自分はそのままで、機械だけが合理的になると、問題が生じるのです。
改良の中身は?
私たちは「自分を改良したい」と考えていますが、その中身はどのようなものかというと、たいしたことではありません。
男性なら「よりかっこよく」「より力強く」「よりもてるように」、女性なら「より美しく」「よりきれいに」「よりスリムに」ということが自己改良だと考えています。
自分を向上させたいという若い男女が何を考えているかというと、そういうことに頑張っているのです。
それで、あらゆる美容法を試みたり、流行を追いかけたり、ダイエットをしたり、男性なら、身体を鍛えたり、お金がないのに見栄を張って車やバイクを買ったりするのです。
中年になると、「より元気に」「より健康に」という目的が出てきます。
いろんな健康法が次から次へと出てきますし、健康食品やサプリメントはきりがなくあります。
仕事の世界では「上達」や「スキルアップ」「キャリアアップ」というものを目指しています。そのためのスクールやセミナーがどれほどあるでしょうか。
マニュアル本もいくらでもありますし、アドバイザーたちもたくさんいます。
食べ物の分野では「よりおいしく」「より手軽に」「より安く」ということに頑張っています。ファーストフードのお店などは、その結果できたものでしょう。
また、現代人、とりわけ都会に住む人たちは、より利便性を求めてスーパーやコンビニで冷凍食品や加工食品を買って食べるようになっています。
でも、そういうものには何が含まれているかわかりません。着色料、香料、酸化防止剤、漂白剤、保存料などたくさんの添加物が入っていますから、決して身体にいいとはいえません。
ときどき、「こんなものを食べたらどうかなあ」と思うものもあります。おいしいと思って食べているものが、身体を壊す場合もあるのです。それを私たちは毎日のように食べています。
なかには、身体がものすごく拒絶反応を起こすものもあります。(続きます)
スマナサーラ長老
根本仏教講義『人生改良計画①-1』文責:出村佳子