2018/11/26

人生改良計画①-2


「改良」の問題点からの続き


このように私たちは「よくなりたい」「改良したい」と考えていますが、このような改良では、自分を改良するどころか、逆の結果になってしまいます。


「より美しくなりたい」「よりスリムになりたい」ということを望んでダイエットをする若い女性たちは、逆に健康をそこない、摂食障害(拒食症や過食症)など、どうにもならない精神病にまでおちいることがあります。

摂食障害に苦しむ女性たちは、もともと精神的にトラブルがあったわけではありません。

元気に明るく遊んでいたかわいい女の子たちなのですが、年頃になってくると、まだ身体が小さいのに「痩せなくちゃいけない」と考えてダイエットをするのです。

他人から見ればかわいくてきれいだし、それ以上痩せたら体力がなくなって勉強も仕事もできなくなるだろうし、見るかぎり「もうちょっと食べなさい」と言いたくなるような女の子たちなのに、本人は「自分は太っている、痩せなければならない」と言うのです。

それでごはんを食べず、栄養失調になり、体力がなくなって、仕事もできなくなるのです。

栄養が不足するとどうしてもイライラしますから、怒りっぽい性格になってしまいます。
こうして人生が苦しくなっていくのです。


「よくなりたい」という気持ちが、悪い結果をもたらしています。よくなろうと頑張っていますが、結果はすべてあだ。そうするとやけになり、さらに踏ん張ろうとします。そうやって、苦しみを増やしているのです。



健康を追い求めつつ



私たちは「もっとおいしく食べたい」と思って、食べ物が持っている「維持する部分」を捨てています。

たとえばリンゴなら皮ごと食べればいいのに、かたいとか、おいしくないとか、食感が悪いという理由で、皮を剥いて捨てています。

でも、リンゴの栄養分は皮のすぐ内側に多く含まれています。真ん中はほとんど水分と糖分だけ。リンゴは、外部のものから身を守らなくてはなりませんから、健康を維持し、身を守り、細胞を守る成分はすべて皮のすぐ内側にあるのです。

なのに、皆さんは皮を厚く剥いて捨てているでしょう。見栄えがよいようにとか、食べやすいようにといって、栄養を全部捨てているのです。

私たちは「健康、健康」と言いながらも、実は健康を壊す道を歩んでいるのです。



適応能力を育てる



では、どうすればよいのでしょうか?
「もっとおいしいものを食べたい」なら、食べものを改良するのではなく、環境や食べ物に適応できるよう、自分の身体を改良することです。

身体は結構すぐに慣れるものです。人間には「自然に適応する能力」があります。パンダとは違って、かなり適応能力があるのです。

しかし私たちはその適応能力を放棄して、パンダと同じ状態になっています。

今のパンダは完全に守ってあげて人工的に繁殖しないと子供をつくれない状態にあります。
中国では、絶滅の危機からパンダを救おうとよい環境のなかで育て、人工的に繁殖させていますが、結局のところ、自分で自然に繁殖する力がなかったらダメでしょう。このようなやり方では、救ったことにならないと思います。

同様に、人間もパンダと同じ状態になっていて、人工的な環境でないと生きていられなくなっているのです。(続きます)
スマナサーラ長老

根本仏教講義『人生改良計画①-2』文責:出村佳子