天界に生まれ変わったカエル/子ヒツジと母ヒツジ/出家したかったヘビ〈ブッダに出会った人たち〉「来たれ見よ3-⑪」からの続き
お釈迦さまは苦しみを知り尽くしている
これまでお話してきましたように、お釈迦さまの在世中、さまざまな人たちが、人だけでなく神や動物たちも、お釈迦さまに会い、自分たちの問題を解決していきました。
お釈迦さまに失敗したケースはないのです。
お釈迦さまはなぜ失敗しなかったのでしょうか?
なぜ成功したのでしょうか?
それは、お釈迦さまは「苦しみ」をすべて知り尽くしていたからです。
人の苦しみは痛いほど理解できますから、問題が解決するように説明できるのは当たり前なのです。
お釈迦さまには、理解できない苦しみはなかったのです。
お釈迦さまは、「すべての生命は無明によって苦しんでいる」ということを理解していました。
ですから、悩んでいる人や失敗した人がいても、その人たちを責めることはしませんし、貶すこともしませんでした。これは重要なポイントで、相手のことを貶さないのです。
お釈迦さまは 「人間はそんなもので、愚かなことしかやりません。無明があるから悩みや苦しみがあり、失敗するのです」と理解して、人を貶すことも非難することもしませんでした。
また、神を信じる人と信じない人とを二分化して、信じる人は天国へ、信じない人は地獄に落ちるといった「脅して処分する」ということもしませんでした。
皆のことを平等に見ていたのです。
999人もの人を殺害したアングリマーラにたいしても、ふつうに考えれば、アングリマーラは極悪中の極悪人で、救いようのない人だと誰もが思うでしょう。
でも、お釈迦さまはそのようには考えなかったのです。
ほんとうは素直でまじめな性格をもっている青年ですが、人から間違った考え方を教えられたために残忍凶悪なことをした、と考えていたのです。
このように、お釈迦さまは人を責めたり脅すことはしませんでした。
そうではなく、「私も輪廻のなかでずっと苦しんできました。ようやく苦しみを解決する方法を見いだしました。君たちにもその方法を教えてあげましょう」という態度なのです。
人が悩んでいるのを見て、「あんたは不幸だ」と言うのではなく、「無明と煩悩があると苦しみます。以前は私もそうでした。しかし今は苦しみがありません。幸福です。その道を君たちにも教えてあげましょう」という態度なのです。
これがお釈迦さまの成功の秘訣です。
(続きます)
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法話:スマナサーラ長老
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文:出村佳子
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生きとし生けるものが幸せでありますように