2019/02/27

偽善者に幸福は来ない

2011-07-26 Tue 人生改良計画4 -1

「〇〇に尽くす」という偽善


私たちは、「自分が幸福になりたい」ということさえ、はっきり知りません。「私は自分を犠牲にして家族に尽くしている」と言う人もいますが、それは嘘だと思います。


もし、本当に家族のために尽くしているなら、なぜ文句を言ったりするのでしょうか? 旦那に尽くした、家族に尽くした、会社に尽くしたなら、それで十分でしょう。なのに、心のなかは不満だらけなのです。


ですから、「あなたに尽くしています」というのは嘘です。事実は、自分のこと、自分の幸福のことしか考えていないのです。


でも、「自分が幸福になりたい」と考えることは悪いという意味ではありません。悪いのは、その本音を隠して、「あなたのために尽くしています」と偽善ぶることです。


たとえば、自分の子供が引きこもりになって不登校になったとしましょう。親は子供のことをとても心配します。しかしそれは外見上のことで、本当は子供が学校に行かないと自分が不安で心配でたまらない、それがいやなのです。


ひどい母親は、「うちの子が不登校になった。学校に行かないでぶらぶらしている。近所の奥さんたちのうわさになるのではないか。恥ずかしい」と、自分の世間体やメンツを気にしま。それで感情的になって、子供に「なんで学校に行かないの!」と怒鳴ったり責めたりし、おまけに「私はあなたのために言っているのよ」と大嘘まで言うのです。






これは、子供のために言っているのではなく、正直なところ、母親は自分が大切で、自分のために子供に学校に行ってほしい、と考えているのです。


そこでポイントは、自分が大切だと思うなら、それを正直に認めることです。「子供が学校に行かないで引きこもっていると、自分が心配だ」「自分が恥ずかしい」ということを認めるのです。


しかし私たちは自分の本当の気持ちに気づかずに、子供にあれこれ命令します。偽善で、言っていることは無茶苦茶ですから、子供は母親の言うことを聞かないのです。


「自分が幸福になりたい」というのは事実であり、真理です。真理を無視して、どうやって正しい生き方ができるでしょうか? ですから「自分の幸せ」をしっかり念じることが大切なのです。(続きます)

スマナサーラ長老

根本仏教講義『人生改良計画④-1』文責:出村佳子