国の王様たち
●ビンビサーラ王とアジャータサットゥ王
当時のインドの大国の一つ、マガダ国の王様、ビンビサーラ王(Bimbisara)は、平和を好む落ち着きのある素晴らしい王様でした。
古くからお釈迦さまの友人であり、仏教に帰依していました。
竹林精舎という寺を建立して、お釈迦さまとサンガ(僧団)にお布施したのをはじめ、常に仏教を保護していました。
ところが、王の息子であるアジャータサットゥ(Ajatasatthu)は、デーヴァダッタに唆されて、この素晴らしい父親を牢獄に監禁し、殺したのです。
しかし、アジャータサットゥは王に即位したのち、
「自分はなんということをしたのか。欲のない父を殺してしまった。私のことをあれほど慈しみ、心配してくれていたのに、私はその父を殺してしまった」
と、自分が犯した罪を悔い、激しく悩みました。
いてもたってもいられなくなり、お釈迦のところに行くと、お釈迦さまに会った瞬間、お釈迦さまが まるで亡き父のような存在に見え、それまでの途轍もない苦しみが すーっと消えていったのです。
以来、アジャータサットゥ王はお釈迦さまを実の父親のように大切に敬い、ビンビサーラ王以上に仏教を保護し、貢献したのでした。
●コーサラ王とマッリカー妃
世界でいちばん愛しい人
コーサラ国も、当時の大国の一つです。
その国王、コーサラ王(Kosala)は、国土を広げるために他国を攻めたりする、どうしようもない王でした。
でも、お釈迦さまのことが大好きで、よく話を聞きに行っていたようです。
コーサラ王にはマッリカー(Mallika)という美しいお妃がいました。
彼女は敬虔な仏教徒であり、お釈迦さまの話をよく聞いて謙虚に生きていました。
性格が大変良いものですから、王はマッリカー妃のことが大好きでした。
一つ有名なエピソードをご紹介いたしましょう。
ある日、コーサラ王とマッリカー妃が座って話しをしていました。
王様はお妃に、「お前にとってこの世の中でいちばん愛しい人は誰か?」と尋ねました。当然、王様は甘い答えを期待して聞いたのです。
しかしお妃は、「この世の中でいちばん愛しい人は自分です」と答えました。お妃は頭のよい方でしたから、お世辞や嘘は言わず、正直に答えたのです。
がっかりした王様を見たマッリカー妃は、逆に尋ねました。
「王様にとって、この世の中でいちばん愛しい人は誰でしょうか?」と。
そうすると王様も、「よく考えると自分のことがいちばん愛しい」と正直に答えたのです。
後日、二人はお釈迦さまのところに行き、この話をしたところ、お釈迦さまは次のように説かれました。
人は誰でも自分のことがいちばん愛しい。
同様に、どんな生命も自分のことがいちばん愛しい。
自分のことを愛しいと知るものは、わが身に引き比べて、
他の者を害してはならない。
(続きます)
生きとし生けるものが幸せでありますように
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法話:スマナサーラ長老
来たれ見よ (Ehipassiko) :誰でもチャレンジできる仏教実践
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文:出村佳子
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