2025/11/30

「生きる」という働き『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

  命を支える4つの「食」とは?


2.触 食(phassāhāra)


生命を維持するものは、物質的な食べ物だけではありません。

目に見える食べ物だけでなく、心の食べ物も摂り入れているのです。


まず、「触(phassa:パッサ)」です。「触れる」ことですね。


私たちは瞬間瞬間、何かに触れて生きています。

目に、色や形が触れてモノを見ています。

耳に、音が触れて何かを聞いています。

鼻に、香りが触れてにおいをかぎ、

舌に、食べ物や飲み物が触れて味を味わっています。

身体の皮膚に、寒さや暑さ、硬さ、やわらかさなどが触れて感触を感じています。

意には、思考や妄想などさまざまな現象が常に触れています。

こうやって、いつでも何かしら対象が触れているのです。


このように、「眼・耳・鼻・舌・身・意」に「色・声・香・味・触・法」が「触れる」ことによって、エネルギーが生まれ、命が維持されています。


生命は生まれてから死ぬまで、すべての時間にわたって、この「触食」を摂りつづけているのです。


この「触れる」ことから、苦や楽など「感覚」が生じます。

さらには、「渇愛」が生じます。

これによって、「生きる」という働きが成り立っているのです。 


命を支える4つの「食」とは?『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】



Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/11/23

苦を理解する『自己愛から慈しみへ、我から無我へ:マッリカー経』より

「第4章 我(attā)から無我(anattā)へ」より 


このように、生老病死など輪廻の苦しみについて考えると、

「なんとかしなければ!」と、緊迫感をおぼえるでしょう。怖くなるのです。


たとえば、みなさんの家に火がつき、火事になったら、すぐに家から飛び出しませんか?

危険だとわかったら、次にとる行動は変わるはずです。

輪廻の危険や苦しみを、みずから感じることができれば、その苦しみから逃れたい、脱出したい、と思うのではないでしょうか。


幸い、ブッダはその逃れる道を教えられました。

その道とは、善行為や瞑想、気づき、八正道などを実践して、心を清らかにすることです。


輪廻の危険を理解した人は、その苦しみから逃れる道を歩み始めるでしょう。


第4章 我(attā)から無我(anattā)へ
自己愛から慈しみへ、我から無我へ:マッリカー経』より

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】

Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā

2025/11/15

友情を壊さない『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

 


第4章 苦しみを引き起こす〈邪語〉とは? より


②離間語(陰口)


邪語の2番目は、pisunāvācā です。

Pisunāvācā は、誰かの陰口を別の人に言って2人の仲を引き裂こうとする行為です。

「離間語」や「悪口」「中傷」と訳されています。


いわゆる、本人のいないところでその人の悪口を言って2人の仲を悪くさせ、分断させるようなことを言うことです。


どういうことでしょうか?


たとえばAさんにBさんの悪口を言って、Bさんのことを悪く思わせたり、
逆にBさんにAさんの悪口を言って、Aさんのことを悪く思わせたりして、2人の仲を引き裂こうとするのです。


これは2人の間だけでなく、グループ間にも、組織間にも、会社間にも、国家間にも、政治間にも、あてはまりますね。


仲を引き裂く離間語は、どんな場合でも悪い行為であり、
悪い業を生み出すことになりますから、
結果として他人だけでなく、自分にも苦しみをもたらすのです。



友情を壊さない


私たちは人として「言葉を使って家族や友人、社会、そして世界に調和をもたらす」ことが期待されます。


ですから自分の使う言葉が、

 ・他者の仲を引き裂かないか

 ・調和をもたらすか

ということをチェックするようにしてください。


悪口を言わないことは、言い換えれば「友情を壊さない」「仲を引き裂かない」ということです。


自分の友情も含め、他人の友情を壊さないことが、安穏への道なのです。


第4章 苦しみを引き起こす〈邪語〉とは?より

正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉
~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道➂

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】


Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/11/02

執着のないこころ『ウペッカー - こころの平穏:偏見を超え、客観的に見る智慧』より

 


執着のないこころ


そこで、自分に何かが起きたとき、

誰かに何かをされたとき、誰かに何かを言われたとき、

いま世の中で起きていることを見るとき、

どんなことも、どんな出来事も、

できるだけ自分の感情や主観を入れないよう、

客観的に観るようにしてください。

このようにして、ものごとに執着しないこころが育っていくのです。


執着は、苦しみをもたらします。

仏教では、苦しみの原因は執着にあると説いています。


モノや出来事、人にたいして執着すると、

それを失うことを恐れ、

不安や怒りなどネガティブな感情が生まれてきます。

それで苦しみを感じてしまうのです。


客観的にものごとを観、ウペッカーがあれば、

こころは執着の苦しみから解放され、平穏になるでしょう。


『こころの平穏 - ウペッカー〈upekkhā〉
 偏見を超え、客観的に見る智慧』

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】


Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/10/25

害を与えない思考『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

 


幸せになる思考(第3章 言葉と思考


正しい思考の3番目は、「害を与えない思考」です。他者をいじめたり、傷つけたり、虐待したりしないことです。


いじめやパワハラは、学校や大学、会社などどこでも大きな問題となっていますね。人はさまざまなやり方で知らないうちに誰かをいじめているのです。


たとえば「自分はいつもトップでありたい」とか「社会的地位を誇示したい」といった気持ちが働いて、他人を貶しめようといじめるかもしれません。


社会には強い者が弱い者を支配するという構造が、いまだにあるのです。


そのような中、「弱い生命をいじめない人」は、優れた人格を持っていると言えるでしょう。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そこで、これら「離欲の思考」「怒りのない思考」「害を与えない思考」など正しい思考(正思惟)が働いているとき、私たちは正しい言葉(正語)を実践することができます。


思考が正しく清らかですから、問題を引き起こす悪い言葉(邪語)を発することはないでしょう。


「幸せになる思考:第3章 言葉と思考より

正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉
~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道➂

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】



Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā