2025/10/17

怒りのない思考『正思惟〈正しい思考:Sammā Sankappa〉~欲・怒り・害意の手放し方―八正道② 』より』


2.「怒りのない」思考(無瞋の思考)


正思惟の2番目は「瞋恚(怒り)のない思考(abyāpāda saṅkappa:アビャーパーダ・サンカッパ)」です。


これは「無瞋の思考」と呼ばれ、強い怒りや憎しみの思考を抱かないことです。


この反対が「瞋恚(怒り)の思考(byāpāda saṅkappa:ビャーパーダ・サンカッパ)です。


瞋恚とは、普通の怒りではなく、強い怒りのことです。自分や他人にたいして激しく怒ったり、不満を抱いたり、憎んだりすることですね。「ゆるせない!」といった強い怒りです。



現代社会における怒りの落とし穴


インターネットやSNSが普及した現代社会では、さまざまな情報が飛び交い、怒りを刺激するような情報も増えています。


何気なく目にした情報やニュースに腹を立てたり、憤りを感じたり、理不尽な出来事によって怒りを爆発させたりしてしまう経験は、誰しもがあるのではないでしょうか。


これには気をつけなければなりません。


怒りは、こころの平穏を乱し、人間関係を悪化させるだけでなく、いろいろな問題を引き起こす元凶となるからです。


だからこそ怒りが生じたときには、それに気づき、すぐに怒りから離れることが重要なのです。


怒りの反対が、「怒りのない思考」です。


別の言葉で言えば、やさしい慈しみの思考や相手を尊重する思考、助けたいといった思いやりの思考です。


この思考が、正思惟の2番目です。


2.「怒りのない」思考(無瞋の思考)
「第3章 苦しみから解放される3つの思考」


チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】

正思惟〈正しい思考:Sammā Saṅkappa〉
欲・怒り・害意の手放し方―八正道 ②


Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/10/03

命を支える4つの「食」とは?『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

 

どんな生命も、「食(栄養・エネルギー)」によって支えられ、維持され、管理されて生きています。

「食」を摂り入れなければ生きていられません。


この「食」を、ブッダは4つの要素に分類して教えられました。


一般的に「食」や「食べる」といえば、私たちはパンやご飯など物質としての食べ物しか思い浮かばないでしょう。


しかしブッダは、「生命は、物質的な食べ物以外に3つの要素を摂り入れて4つの食で生きている」と説かれました。


4つの「食(āhāra)」とは、


 1.段食(kabaliṇkārāhāra)

 2.触食(phassāhāra)

 3.意思食(manosañcetanāhāra)

 4.識食(viññāṇāhāra)


です。


これら4つの食のうち、身体を維持している食が1つ、心の食が3つになります。

4分の3を、心の食が占めているのです。ここで、心がいかに生命の維持に大きく関わっているか、ということがわかりますね。


命を支える4つの「食」とは?『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】



Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/09/28

穏やかな世界『自己愛から慈しみへ、我から無我へ:マッリカー経』より

 

人のなかには、他人が何をしたのか、何を得たのか、何に成功したのか、
どんな間違いをしたのか、どんな失敗をしたのかと、あれこれ気になる人もいます。


そうやって、自分と他人とを比べたがるのです。それがクセになっています。


これは悪いクセです。


なぜなら比べた時点で、こころに欲や怒り、嫉妬などが生まれ、自分にたいする慈しみが消えてしまうからです。


そこで、比べるのではなく、自分のよいところを認め、他人のよいところを認めることが大切です。


そうやって、互いに助け合い、励まし合い、学び合うことで、自分にも他人にも、美しい穏やかな世界があらわれるのです。


自己愛から慈しみへ、我から無我へ『マッリカー経』より



2025/09/20

思考の真のあり様『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

  

思考の真のあり様


さらに、真理の観点からものごとを観るならば、

どんな思考も浮かんで消えていくことがわかるでしょう。

それが思考の真のあり様です。


ブッダはこのことを発見し、他の人もそれを発見できるよう、

さまざまなやり方で教えを説かれました。

だからこそブッダは「阿羅漢(arahant)」と呼ばれるのです。


ブッダの特質の1番目は、阿羅漢です。

ブッダの偉大な「徳」は9つあり、その第一が阿羅漢なのです。


では、「阿羅漢」とは何でしょうか?

阿羅漢とは、「煩悩」をすべて滅し尽くし、

神々と人間の尊敬や供養を受けるに値する方」です。


「煩悩をすべて滅し尽くした」とは、

いわゆる「生まれかわり死にかわりの輪廻の輪を断ち切った方」ということです。

輪廻転生のサイクルから脱出することによって、阿羅漢に達することができるのです。


ブッダは、いかなる不善行為(akusala)もしませんでした。

こころの中でも、思考の中でも、微塵の不善行為もしないのです。

なんと尊い人生でしょうか!


「頭の中でのおしゃべり:第3章 言葉と思考より

正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉
~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道➂

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】




生きとし生けるものが幸せでありますように

2025/08/30

頭の中でのおしゃべり『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

   

頭の中でのおしゃべり


私たちは普段から無意識に言葉を使ってものごとを考えています。

考えているときは口に出しませんが、頭の中でいろいろな言葉が行き交かっているのです。


たとえば、「今日はコンビニに寄って飲み物を買っていこう。職場に着いたら昨日やり残した仕事を終わらせないと。あー、全然進んでない。どうせまた上司に怒鳴られるんだ。ほんとにストレスがたまる。もう辞やめちゃおうかな。でもお金も必要だし。でもな……」などと。


このように、頭の中でいろいろな言葉がまとわりついてくるのです。

これは誰か他人と話しているのではなく、自分自身と話しているということです。

ある種の会話が自分の頭の中で起こっていて、言葉が生成されています。

いわゆる、思考の中で言葉のやりとりが行なわれているのです。


もし、この思考が悪いものなら苦しみを生み出すでしょうし、

善いものなら幸せな結果を生み出すでしょう。


ですから、頭の中でのおしゃべりも善悪の業(kamma)をつくり出すことを理解して、よく気をつけたほうがよいのです。