人生改良計画⑤-2
瞬間瞬間、自分に起きているできごとを観察すると、妄想が消えていきます。妄想ができない状態になり、それで智慧が見事に現れるのです。これまで「智慧」という言葉を使ってきましたが、智慧とは一体どのようなものでしょうか? 智慧があるとはどういうことでしょうか?
智慧とは、あれこれ妄想しないことです。何か考えなくてはならないことが生じても、瞬時に解決して終わるのです。いわゆる「答えを出して終わる」ということです。グチャグチャ考えない状態が、智慧なのです。
では、なぜそれが智慧なのでしょうか?
「考えない」ということは無知ではないでしょうか?
智慧のある人は、問題が起こったとき、瞬時に答えが出ます。全然考える必要がないのです。
たとえば会社で問題が発生したとしましょう。社員たちが皆「どうしよう、どうしよう」と頭を抱えて混乱しているとき、智慧のある人は、「こうすればいいんじゃないか」と言うのです。
みんなは、「あんたは全然真剣に考えていない。問題の重大さがわかっていない。いい加減なことを言うなよ」と腹を立てるかもしれません。
でもよく見てみると、その答えはピッタリなのです。
智慧のある人は、他の人のように考え込まなくても、「こうすればいい」と適切な答えが明確に出せます。必要なのはそれです。それが智慧です。問題が発生したとき、取り乱さずに、即座に答えを出せることが智慧なのです。考え込むことではありません。
なぜ、考えてもよい答えが出ないのでしょうか?
それは、欲と怒りと無知で考えているからです。「考えている」と言っていますが、結局は貪瞋痴のなかでグルグル回転しているだけなのです。
ですからいくら考えても適切な答えは見つかりません。それどころか、悩みや苦しみが増えるだけなのです。
(続きます)
スマナサーラ長老
Patipada『根本仏教講義』
妄想をやめると智慧が現れる(人生改良計画⑤-2)
②-1)改良すべきものは何か?