2025/10/03

命を支える4つの「食」とは?『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

 

どんな生命も、「食(栄養・エネルギー)」によって支えられ、維持され、管理されて生きています。

「食」を摂り入れなければ生きていられません。


この「食」を、ブッダは4つの要素に分類して教えられました。


一般的に「食」や「食べる」といえば、私たちはパンやご飯など物質としての食べ物しか思い浮かばないでしょう。


しかしブッダは、「生命は、物質的な食べ物以外に3つの要素を摂り入れて4つの食で生きている」と説かれました。


4つの「食(āhāra)」とは、


 1.段食(kabaliṇkārāhāra)

 2.触食(phassāhāra)

 3.意思食(manosañcetanāhāra)

 4.識食(viññāṇāhāra)


です。


これら4つの食のうち、身体を維持している食が1つ、心の食が3つになります。

4分の3を、心の食が占めているのです。ここで、心がいかに生命の維持に大きく関わっているか、ということがわかりますね。


命を支える4つの「食」とは?『こころの栄養〈五蓋と七覚支〉』より

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】



Sabbe Sattā Bhavantu Sukhitattā


2025/09/28

穏やかな世界『自己愛から慈しみへ、我から無我へ:マッリカー経』より

 

人のなかには、他人が何をしたのか、何を得たのか、何に成功したのか、
どんな間違いをしたのか、どんな失敗をしたのかと、あれこれ気になる人もいます。


そうやって、自分と他人とを比べたがるのです。それがクセになっています。


これは悪いクセです。


なぜなら比べた時点で、こころに欲や怒り、嫉妬などが生まれ、自分にたいする慈しみが消えてしまうからです。


そこで、比べるのではなく、自分のよいところを認め、他人のよいところを認めることが大切です。


そうやって、互いに助け合い、励まし合い、学び合うことで、自分にも他人にも、美しい穏やかな世界があらわれるのです。


自己愛から慈しみへ、我から無我へ『マッリカー経』より



2025/09/20

思考の真のあり様『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

  

思考の真のあり様


さらに、真理の観点からものごとを観るならば、

どんな思考も浮かんで消えていくことがわかるでしょう。

それが思考の真のあり様です。


ブッダはこのことを発見し、他の人もそれを発見できるよう、

さまざまなやり方で教えを説かれました。

だからこそブッダは「阿羅漢(arahant)」と呼ばれるのです。


ブッダの特質の1番目は、阿羅漢です。

ブッダの偉大な「徳」は9つあり、その第一が阿羅漢なのです。


では、「阿羅漢」とは何でしょうか?

阿羅漢とは、「煩悩」をすべて滅し尽くし、

神々と人間の尊敬や供養を受けるに値する方」です。


「煩悩をすべて滅し尽くした」とは、

いわゆる「生まれかわり死にかわりの輪廻の輪を断ち切った方」ということです。

輪廻転生のサイクルから脱出することによって、阿羅漢に達することができるのです。


ブッダは、いかなる不善行為(akusala)もしませんでした。

こころの中でも、思考の中でも、微塵の不善行為もしないのです。

なんと尊い人生でしょうか!


「頭の中でのおしゃべり:第3章 言葉と思考より

正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉
~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道➂

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】




生きとし生けるものが幸せでありますように

2025/08/30

頭の中でのおしゃべり『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

   

頭の中でのおしゃべり


私たちは普段から無意識に言葉を使ってものごとを考えています。

考えているときは口に出しませんが、頭の中でいろいろな言葉が行き交かっているのです。


たとえば、「今日はコンビニに寄って飲み物を買っていこう。職場に着いたら昨日やり残した仕事を終わらせないと。あー、全然進んでない。どうせまた上司に怒鳴られるんだ。ほんとにストレスがたまる。もう辞やめちゃおうかな。でもお金も必要だし。でもな……」などと。


このように、頭の中でいろいろな言葉がまとわりついてくるのです。

これは誰か他人と話しているのではなく、自分自身と話しているということです。

ある種の会話が自分の頭の中で起こっていて、言葉が生成されています。

いわゆる、思考の中で言葉のやりとりが行なわれているのです。


もし、この思考が悪いものなら苦しみを生み出すでしょうし、

善いものなら幸せな結果を生み出すでしょう。


ですから、頭の中でのおしゃべりも善悪の業(kamma)をつくり出すことを理解して、よく気をつけたほうがよいのです。


2025/08/23

まず、善い性格を育てる『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

 

まず、善い性格を育てる


生命は誰でも過去生で積み重ねてきた業(kamma)を

こころに備えて今生に生まれています。

たとえば過去生で数学者だったとしたら、

その性格や傾向を、今生でもいくらか引き継いでいるということです。


無数の過去生からさまざまな性質が引き継がれており、

この世でのいのちを終えたとき、

今生で蓄積された行為や性質、傾向はいくらか

次の「生」へと引き継がれていくのです。


これについては「第3章 言葉と思考:こころの癖と意図」で

詳しくお話いたします。

2025/08/16

なぜ、言葉が大切なのか?『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則―八正道➂ 』より

 

なぜ、言葉が大切なのか?


 


「なぜ、言葉が大切なのか?」と聞かれることがあります。


私たちは普段、何気なく話しています。まるで空気のように言葉を使っています。なかには「自分は思っていることをそのまま口に出して言う。それが自然体だ」と言う人もいるでしょう。


一見、ないがしろにされがちな「言葉」ですが、ブッダは最も重要な真理である「八正道(苦しみを滅する8つの道)」のひとつに「正しい言葉(正語:しょうご)」を含めました。


なぜ、言葉がそれほど大切なのでしょうか?


それは、私たちの生き方に言葉が深く関わっているからです。


人はこころだけでなく、言葉を通じてものごとを学んだり、自分の考えを他人に伝えたり、相手の考えを理解したり、互いにコミュニケーションをとることができます。言葉によるコミュニケーションが、人との関係の中で重要なものとなっているのです。


たとえば、仕事では連絡や報告、アイデアなどを共有し、協働するために欠かせないツール(道具)となっていますし、学校や研修では知識を身につけ技術を習得するために言葉が使われますね。情報をやりとりするときにも言葉が使われます。


では、言葉は単に情報をやりとりするだけのツールでしかないのでしょうか?


そうではありません。言葉は単なるツールではなく、「正しく育てるべきもの」なのです。


「言葉」のことをパーリ語で vācā(ワーチャー)と言います。
この vācā を正しく使うことを「正語:sammā vācā(サンマー・ワ―チャー)」と言い、この正語を育てることによって私たちの性格も「善」のほうへと向上していくのです。


そのため、苦しみをなくしたい、「善」の道を歩みたい方にとっては、言葉の善い面である「正語」を実践することが非常に大切になります。

 

また、言葉を正しく使う人は他人からも尊敬されるでしょう。


はじめに 言葉の大切さより


正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道➂

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老【著】




生きとし生けるものが幸せでありますように

2025/07/31

【新刊】正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉―八正道➂

  

🔸苦しみから解き放たれる道「八正道」の第3の道
 「正語(正しい言葉)」


悩み苦しみを生みだす言葉を手放し、 こころに安らぎをもたらす「正しい言葉」を育てるには?


『正語〈正しい言葉:Sammā Vācā〉 ~幸・不幸をつくる言葉の法則 ― 八正道 ➂』

チャンディマ・ガンゴダウィラ長老〔著〕出村佳子〔訳〕が刊行されました。


よろしければ、ぜひご一読ください。




◇ ◇ ◇ ◇ 


目 次


はじめに 言葉の大切さ


第1章 八正道における「言葉」


 悩み苦しみをなくす道「八正道」

 ありのままに見る「正見」

  ・自分中心の見方を手放す

 3つの清らかな思考


第2章 言葉はどのように生まれるのか?


 言葉の危うさ

 正しい言葉「正語」とは?

 まず、善い性格を育てる


第3章 言葉と思考


 頭の中でのおしゃべり

 こころの癖と意図

 習慣によって染みついた傾向

 「言葉」をつくるのは「思考」

 幸せになる思考


第4章 悩み苦しみを引き起こす「邪語」とは?


 ①妄 語(嘘)

 嘘は悪のみなもと

「善のこころ」の根源を攻撃する行為

 意図と業(kamma


 ②離間語(陰口

 友情を壊さない


 ③粗悪語(乱暴な言葉

 言葉の選択


 ➃綺 語(無駄話


第5章 やすらぎをもたらす「正語」とは?


 正語(正しい言葉)をサポートする要素

 ◎ 正 見 = 理解し判断する

 ◎ 正精進 = 努力し実践する

 ◎ 正 念 =「いま・ここ」に気づく

 「中道」における言葉

 「言葉の節度」って何?(mitabhāṇī

 聖なる沈黙(Noble silence


第6章 「正語」の育て方


 ①話す前にチェックすべき5つのこと


 ②振り返り振り返り、観察する

 正語と気づき(マインドフルネス)


 ③10の優れたトピック


 蜜と刀:言葉の二面性


おわりに

著者紹介


◇ ◇ ◇ ◇ 


チャンディマ・ガンゴダウィラ長老
Ven. Dr. Chandima Gangodawila

フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学 哲学部・助教。

カナダのビクトリア大学・宗教社会研究センター元研究員。

タイ国立マハーチュラロンコーンラージャヴィドゥャ大学仏教研究所刊行『国際仏教ジャーナル誌』の査読編集員。

フィリピン、マレーシア、シンガポール、アメリカ、カナダなどの大学や寺院で、講演や法話、瞑想リトリートを行なっている。


◎ブログ ▸ Paṭisota ▸ https://patisota.blogspot.com
◎法 話 ▸ Youtube Channel ▸ https://www.youtube.com/patisota
書 籍 ▸ https://sukhi-hotu.blogspot.com/2019/07/ven-chandima.html


◇ ◇ ◇ ◇ 

見〈正しい見方:Sammā Diṭṭhi〉
ありのままに見る智慧―八正道① 』


『正思惟〈正しい思考:Sammā Sankappa〉
欲・怒り・害意の手放し方 ― 八正道②』




生きとし生けるものが幸せでありますように


2025/06/30

実証できる教えとは?「現見経」を読む 4

  (増支部六集四十八「現見経」)

「第二の現見経」 


言葉で喋ってはいけないことを喋っている時、これは本当は喋ってはいけないことだと知っている。喋るべき言葉を喋っている場合は、正しい言葉を喋っていると知っている。悪い思考がある時は、悪い思考があると知っている。悪い思考が無い時は、悪い思考が無いと知っている。そうすると、その人は「自分自身で分かっている。知っている」という結論になるのです。このように、自分の眼の前に証拠があるのです。 (前号から続きます)

2025/05/31

実証できる教えとは?「現見経」を読む 3

 (増支部六集四十八「現見経」)

「第二の現見経」 


二番目の経典は、一番目の経典とそれほど違いはありません。

Atha kho aññataro brāhmaṇo yena bhagavā tenupasaṅkami;

あるバラモンがお釈迦様のところに来て、「法は現証である(sandiṭṭhiko dhammo サンディッティコー ダンモー)の定義をしてください」と頼みます。

2025/04/30

実証できる教えとは?「現見経」を読む2

 (増支部六集四十七「現見経」)

 「第一の現見経」


証拠は目の前にある


「第一の現見経」の二番目の段落を読んでみます。