2019/03/09

悟りに至るための7つの要素


悟ることは不可能なこと? の続き


A:回 答 ―― グナラタナ長老



実践と経験が深まれば深まるほど、ブッダが説いた「七覚支」――悟りに至るための7つの要素――を育てるよう、精進するようになるでしょう。この7つの要素は、順番に育っていきます。ひとつの要素が育つと、次の要素が育つのです。


まず、気づき(sati:念)を育てることから始めます。

気づきが育つと、択法(dhamma-vicaya)が育ちます。
(択法:明晰に見ること、分析すること)

択法が育つと、精進(viriya)が育ちます。

精進が育つと、喜び(pīti:喜)が育ちます。

喜びが育つと、軽安(passaddhi)が育ちます。
(軽安:心身が軽やかで安らかになること)

軽安が育つと、心が統一(samādhi:します。

心が統一すると、平静(upekkhā:捨)が育つのです。


正直に決意して、真摯に実践しているとき、これらのことを、ほんのわずかかもしれませんが、垣間見ることができるでしょう。
実践が深まれば深まるほど、悟りへの理解も深まっていくのです。

ただ、私たちにとっていま大切なことは、実践(気づきの実践)を始めること、そして心を清らかにするよう、精進を続けることです。


 五蘊(色受想行識)の生と滅を、
 瞬間瞬間、智慧で洞察するとき、
 その人は喜悦を味わい、
 不死(涅槃)を見る
 ~ダンマパダ374

グナラタナ長老
仏教Q&A『悟ることは不可能なこと?』翻訳:出村佳子

2019/03/04

悟ることは不可能なこと?







A:回 答 ―― グナラタナ長老




悟りに達するための最もシンプルな方法があります。それは、欲と怒りと無知を取り除くことです。それだけです。それ以外、することはないのです!(笑)


グナラタナ長老著 出村佳子訳


悟ることが大変だと感じるのは、事実だと思います。しかし、このような疑念を抱くのは、無知があるからです。心の最も根底にある、無知から生じているのです。


私はいま、「無知」という言葉を使いましたが、どうか気分を悪くしないでください。どんな人にも無知はあります。無知が強い人もいれば、弱い人もいます。無知が強ければ、「悟りに達するのはむずかしい、無理だ」と思うでしょう。


しかし、無知を取り除くにつれ、だんだん「悟りは不可能なことではない」ということがわかってくるのです。心を育てるにつれ、悟りとはどのようなものかということがだんだん見えてくるでしょう。


そこで、いますぐに悟らなければならない、などと考えないようにしてください。焦らないように! 私たちがすべきことは、まず「心を清らかにしよう」と実践を始めること、そして、ひとつずつ段階的に進んでいくことです。


この道に、近道はありません。 精進して、欲と怒りと無知をひとつひとつ取り除き、このように実践していくのです。

2019/02/27

偽善者に幸福は来ない

2011-07-26 Tue 人生改良計画4 -1

「〇〇に尽くす」という偽善


私たちは、「自分が幸福になりたい」ということさえ、はっきり知りません。「私は自分を犠牲にして家族に尽くしている」と言う人もいますが、それは嘘だと思います。


もし、本当に家族のために尽くしているなら、なぜ文句を言ったりするのでしょうか? 旦那に尽くした、家族に尽くした、会社に尽くしたなら、それで十分でしょう。なのに、心のなかは不満だらけなのです。


ですから、「あなたに尽くしています」というのは嘘です。事実は、自分のこと、自分の幸福のことしか考えていないのです。


でも、「自分が幸福になりたい」と考えることは悪いという意味ではありません。悪いのは、その本音を隠して、「あなたのために尽くしています」と偽善ぶることです。


たとえば、自分の子供が引きこもりになって不登校になったとしましょう。親は子供のことをとても心配します。しかしそれは外見上のことで、本当は子供が学校に行かないと自分が不安で心配でたまらない、それがいやなのです。


ひどい母親は、「うちの子が不登校になった。学校に行かないでぶらぶらしている。近所の奥さんたちのうわさになるのではないか。恥ずかしい」と、自分の世間体やメンツを気にしま。それで感情的になって、子供に「なんで学校に行かないの!」と怒鳴ったり責めたりし、おまけに「私はあなたのために言っているのよ」と大嘘まで言うのです。






これは、子供のために言っているのではなく、正直なところ、母親は自分が大切で、自分のために子供に学校に行ってほしい、と考えているのです。


そこでポイントは、自分が大切だと思うなら、それを正直に認めることです。「子供が学校に行かないで引きこもっていると、自分が心配だ」「自分が恥ずかしい」ということを認めるのです。


しかし私たちは自分の本当の気持ちに気づかずに、子供にあれこれ命令します。偽善で、言っていることは無茶苦茶ですから、子供は母親の言うことを聞かないのです。


「自分が幸福になりたい」というのは事実であり、真理です。真理を無視して、どうやって正しい生き方ができるでしょうか? ですから「自分の幸せ」をしっかり念じることが大切なのです。(続きます)

スマナサーラ長老

根本仏教講義『人生改良計画④-1』文責:出村佳子